

invitationリリース記念ロングインタビュー
中島愛、6年ぶりのミニアルバム。
ランカ・リー、地元、GUMI、
デビュー曲、友情
ゆかりのある制作陣とともに
中島愛の足跡をたどる5篇の物語。
中島愛が生まれ育った古巣を立ち、3年の月日が経つ。それからの中島はデビュー15周年という節目を記念したイベントやライブ活動にも励み、およそ半年ごとのペースで新曲をデジタルリリースしてきた。その楽曲たちは、いずれも自身にとってかけがえのないテーマを持ち、ときにずっと口にできなかった素直な言葉を刻みながら、ゆかりある制作陣とともに作り上げられてきたものだ。“ランカ・リー”、“地元”、“GUMI”、“デビュー曲”、そして盟友・May'nから贈られた“友情”……。これまで自身の歌と出会ってくれたすべての人たちに届くことを願い『invitation』と題して送る、セルフプロデュースによる6年ぶりのミニ・アルバム。そこに秘めた思いを訊く。
取材・文:キツカワトモ
編集:河合良彦(Core
Creative)
今回のミニアルバムは、3年前から構想されていたそうですね。
そうなんです。少しさかのぼってお話すると、以前所属していたレーベルのフライングドッグから最後にリリースしたアルバム『green diary』(2021年2月3日発売)は、自分でも腹をくくって制作に臨み、大きな組織の中でこそできるものとして悔いなく作り上げることができたと思っています。そして、コロナ禍で思うように活動できず自信を失ってしまったことや、いくつかの要因で体調を崩してしまったことなどから、自分の活動スタイルを改める必要があると考えたときにストロボミュージックへの移籍を決断しました。
今の環境の良いところは、自分が思ったことをすぐかたちにできることです。私を迎えてくれたスタッフも、ありがたいことに“中島さんがやりたいことをやりましょう”と言ってくださったんですよ。そこで早々に妄想レベルで打ち立てたのが、2023年7月の「equal」を皮切りに、だいたい半年ペースで新曲をデジタルリリースしていき、それらを2025年の夏に1枚のミニアルバムにまとめるというプロジェクトでした。レポート用紙に1曲、1曲の制作意図から何からすべて書き込んで説明しました。なぜ手書きかというとただパソコンが使えないからであって、その方が熱意が伝わるだろうといった意図はありません(笑)。タイトルの『invitation』も、当初から決めていました。
移籍前のインタビューで“大通りから裏路地へと道は変わっても歩き続ける”というお話をされていたことを思い出します。メジャーレーベルでの最後のアルバムは『green diary』という内向きのモチーフでしたが、今回はどうして『invitation』という外向きのメッセージを持つタイトルをつけたのですか?
まさに『green diary』は、自分の気持ちを書き連ねるとか、何十年後かにお父さんやお母さんの日記をこっそり子供が読んでしまうといった意味合いを持つアルバムで、作詞作曲編曲のすべてを様々な方にお願いして、私は“原案”のようなかたちで真ん中にいるという手段を取らせていただきました。大通り的な座組の中での集大成として内向きなものを発表するのが、自分の美学にも沿うものだったんです。
でも、そこから離れて裏路地を歩き始めたからこそ、今度は外向きになる必要があると思いました。やっぱり歌うことを職業として選んだからには“仕事”であるし、自分ひとりでこっそりやって満足しているなら“趣味”じゃないかと思ってしまったんですよね。少しでも人を巻き込むために“私は外向きです”という意思を発信する必要があり、そのためのわかりやすいワードとして『invitation』……“招待状”がありました。あと、子供の頃から何となく綴りが好きだったということも理由のひとつです。
7月22日という発売日ひとつにも理由があるそうですが、“produced by 中島愛”と銘打たれているだけあって中島さんらしいこだわりがつまっていますね。
確かに“produced by 中島愛”ではあるのですが、私が歌手活動を通してご一緒してきたプロデューサーやディレクターは本当にこだわりの強い、言ってしまえば“癖が強い”方ばかりで、その方たちから受けてきた影響が私を通してかたちになっただけかもしれないなと思っています。例えば半年ごとにデジタルリリースするといったエンタメ性も、元々の私の中にはまったくないものでした。そういう意味でも、これまでにいた環境でいただいた人脈や恩恵に感謝しつつ“育ててきてもらった自分”というものを最大限に活かしたミニアルバムになったように思います。7月22日はランカ・リー=中島愛のデビュー曲「星間飛行」の発売日(6月25日)と私のステージデビュー日(8月18日)の“真ん中バースデー”という……それはまあ、昔から記念日にこだわりがありすぎる私の自己満足です(笑)。
それでは、収録曲についてお話をうかがっていければと思います。まず「equal」では、新天地へ移ろうとも決して離れることのない“ランカ・リー”への思いを歌われましたね。
移籍一発目は必ずこの曲名で作りたいと決めていました。私は“ランカ・リー=中島愛”としてデビューして以来、誰に命じられたわけでもないのに、その“式”を成立させる以外のことを人生で優先したことがなかったんです。それがゆえに苦しんできたこともたくさんあって、何よりつらいのは誰にもわかってもらえないことでした。二次元のキャラクターと本名の名前が“=”で表記されている経験をしている人なんてそうそういないし、わかろうとしてくれる人はいても本当のところではわかってもらえないというジレンマをずっと抱えていました。でも“じゃあ、ランカを他の人に譲れますか?”と聞かれたら、答えは確実に“NO”なんですよね。それは裏を返せば私にしかない利点で、絶対的な味方がいるという心強さでもあります。受け入れざるをえない使命であり“譲れない”とはっきり思ったとき“=”であることを宣言すべきだと覚悟を決めました。
作曲を西脇辰弥さんにお願いしたのは、私のライブを長年担当してくださっていてマクロスシリーズにも関わられている、つまり中島愛とランカ・リーの両面を分かってくださっている方だからです。“バンドの真ん中に立つボーカルの気持ちで歌いたい”とリクエストして、バンド全員揃って一発録りというキャリア上でも初めてのレコーディングをしました。歌詞は、以前「メロンソーダ・フロート」という曲を書いていただいた児玉雨子さんとの共作です。自分で全部書ききる選択肢もあったのかもしれないけど、もしかしたら違う人に“〝=〟でいいんだよ”と言って欲しかったところがあるのかもしれません。まずワンコーラス分の歌詞を書いたあと、“私はこう思うんですけど、雨子さんはどう思いますか?”と投げかけながら、文通するようなかたちで書いていただきました。
ずっと、私がランカちゃんのことを“好き”と言うのもいけないことなんじゃないかと思っていました。ファンの方から“もっとランカちゃんへの思いを発信して欲しい”と言われることも多いのですが、何だか自分で自分のことを褒めるようで難しかったんです。でも、この曲ができたことで、やっと本当の気持ちを口にすることができたし、以前より“〝=〟も大変なんだよ〜”と冗談交じりに言えるようにもなった気がします。私がもっと年齢を重ねたら違う葛藤が生まれてくるかもしれないけど、そんなときにもまたこの曲に立ち返りたいと思います。
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